小説家
畑裕子さん

女性と滋賀の風土にこだわって、小説を書き続けている作家、それが畑裕子さんです。畑さんは『面・変幻』で1993年第5回朝日新人文学賞受賞した女流作家。そんな女流作家が滋賀県という土地に根を降ろしていることに驚くと同時に、その素顔を垣間見ることにします。


滋賀には宝物がいっぱい隠されています。

子供の喘息がきっかけで、13年前に京都から自然の多い滋賀に引っ越して来た畑さん。小説を書き始めたのたのは、竜王町に来てからで、それまでは教師をしながらの子育ての毎日のため、なかなか時間が取れなかったと言います。

「小説を書く想いは、学生の頃からありました。滋賀に来てからは非常勤となり、時間の余裕がでてきたのと、自然環境の中で暮らしていることが、文筆活動への創作意欲を沸かせたのかも知れません。私自身、京都の田舎育ちですが、今思えば自然の中で培われたものは大きいですね。私の小説にも滋賀の風景を描いていますが、滋賀を知れば知るほど、この土地の良さが確かめられます。滋賀は文化不毛の地と言う言葉を耳にしますが、この言葉は表面的でしか見ていないんだと思います。滋賀には宝物がいっぱいあるのにいかされていないのが残念です」

滋賀の情況は情報伝達方法に問題があるのだと畑さんは言います。

「今は何処に居ても情報が入って来る。それは良い反面、土地の独自性がなくなりつつあることも事実です。土地の独自性が見つけられないで、新しいものに手を出す。それが滋賀県にも言えるのではないでしょうか。」


滋賀の風景は現代人が求めるいにしえの風景なのです。

従軍慰安婦だった日本女性の苦悩をテーマに描かれている小説「椰子の家」の中には、かつて従軍慰安婦だった千代が、同じ慰安婦で朝鮮女性のイースンの骨壷を抱いて、琵琶湖の浜辺から多景島を眺める風景が描かれています。「滋賀の風景は現代の日本人が求める懐かしい風景なのです。」今、畑さんが描こうとしている『鏡の宿』も、地元竜王町で、中仙道に位置し、古典にも出てくる場所です。

「滋賀県に住んでいるから、その土地のことを知ろうと思うし、小説にも描ければと思うのです。」

滋賀の風景はあくまでも、畑さんの小説の一つのエッセンスとして挿入されています。そのエッセンスの情報収集は、環境問題に取り組んでいるご主人の畑明郎さん(大阪市立大学助教授)と滋賀を探索することだと言います。

「夫は自分に関係のある環境を視点に、私はその土地の歴史や風土を知るために、よく二人で出掛けますね。」

自分が住む郷土滋賀を何のためらいもなく素直に小説に表現でき、自ら郷土作家であると言う畑さん。滋賀をよく知ることは、その土地を好きになることを畑さんの小説に対する姿勢から感じとることができます。そして、そのことを一番に理解できるのは、郷土滋賀に住む私たちではないでしょうか。


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